■VEMAC RD 180のテストドライブ

●日本の道を走る?

 私にはまだ試したいことが残っていた。それは日本の道路、特に悪い舗装路に似た路面 を走ってみたかったのである。
 総じてイギリスの道は良い。おそらく、地震の無い北ヨーロッパの地域にあることや、その地質、あるいは舗装の種類も硬いようで、平滑度が高い。あのオースチン・ミニのラバーサスの発想など、その路面 あってのこととさえ思えるのだ。
 その要望は事前に連絡しておいたので、クリスが走行ルートを設定してくれてあり、彼が横に乗って道案内をしてくれる。
 それは、工場から比較的近いところの周辺を走りまわる5〜6キロ程度のルートであり、狭い田舎道ばかりで、変な言い方だが、ちゃんと舗装の悪いところもあったのだ。それは、場所によってはひどく路面 がうねり、いくら日本の道が悪いといってもこれほどひどくは無い、と弁護したくなる程だが、まあテスト走行としては最適ではある。
 VEMACのサスペンションはかなり硬めであり、さて、どうなるものかと走ってみるが、以外と走れるではないか、確かにバネの設定は硬く車体を揺らす。しかし突き上げが来ないので車の動きに角が無いのである。時には、腹を擦るのでは、と思うようなデコボコを通 過する時など腰を浮かす準備をするが、ガンとした突き上げは来ないので、座ったままで問題なく通 過してしまう。意外な吸収力に驚いてしまうが、ついにはデコボコ道も結構なスピードで走り回っていた。
 繰り返しになるが、これはダンパー性能によるところが大きい。ダンパーの初期の動き出しが非常に良く、且つストロークに従い減衰力を大きく高める設定であり、その過渡特性も含めて絶妙のダンピングなのである。因みにダンパーはSHOWA製を採用しているが、マクラーレンF1で開発したノウハウが生きているのではと思ってしまうのである。
 また、エンジン特性も、こうした比較的低速での加減速の繰り返しでも非常に扱い易く、言わば、どこからでも加速に移れるので気持ちが良い。カタログ数値を気にするあまり、低回転でのトルクの無いエンジン特性の車もあるが、VEMACではシャシー性能同様にデコボコ道の走行からサーキット走行まで包括するエンジンを搭載することが出来た。

 車はまだ完成した訳ではない、先行試作の第1号車としては、このレポートのように、シャンパンかなりの完成度に仕上がり、これによりVEMACの素性を知ることも出来た。
 しかし次の数台の試作車に向け、数10ヶ所の改良を行う。そして、その第2次試作車のテストの後に再度改良を施し、量 産車を製造する段取りとなる。

 クリスの家のベランダからは美しい丘陵地が見渡せる。
 全てのテスト走行を終え、傾いた日差しの景色を眺めていると、クリスがシャンパンを用意してきた。
 構想から、長い年月をかけてここに至った。
 小野社長、クリス、ルーク、そして私、我々はささやかに完成を祝った。


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