■VEMAC RD 180のテストドライブ

● サーキット走行

 なんと久しぶりのカドウェルパークだろう、1979年以来であるから、もう21年にもなる。
 あのとき、私はラルトRT−1を駆り英国F3シリーズに参戦していた。その後、名を上げたナイジェル・マンセルやステファン・ヨハンソン、マイク・サックウェル、そしてデ・チェザリスなど、当時はまだ若い顔立ちで、このローカルサーキットの木々に囲まれたパドックで談笑していたのが思い浮かぶ。
 そのレースの時、こんなロンドンから離れたサーキットに日本から知人が応援に来てくれたのである。その人こそ、このVEMACプロジェクトのリーダーであり、(株)東京アールアンドデーの社長、小野昌朗氏なのである。縁は誠に異なもので、そのカドウェルパークで我々の作った車をテストドライブすることになるなど誰が予想出来たろう。
 コースは丘陵地の地形を生かしたままにレイアウトされていて、丘を駆け上る高速コーナー、丘の上の高速ストレート、その後の中速変形コーナー、丘を下りながらの中速コーナー、そして短い直線の後、左、右の直角コーナーを曲がると、堤防を登るようなとんでもない急激な坂を上がり、その先には、なんとジャンピングスポットがある。そして中速のS字があり、突き当たりが見えると右直角ターン、そして緩やかに右に曲がるとスタートラインに戻る。という、誠に変化に富んだサーキットであり、そして、とても景色の美しいサーキットである。
 久々の走行にゆっくりとコースを確かめるように走り出すが、しかし、サーキットでいつもするように毎周ペースを上げていった。サーキット
 数ラップもすると、すでにネオヒストリックレーシングカーのカドウェルでは滑り出していると思えるスピードにはなっているが、しかし何も起こらない。かなりペースを上げないと限界を越えないのだ。一寸困った、限界を越えさせなければサーキット走行の意味はないし、相当攻めないと限界を越えそうにない。といってサンドグラベルエリアなど無いこのサーキットでは、中高速部分ではかなりリスキーであり、万一新車を壊しては大変である。
 とりあえず低速の直角ターンあたりから攻め切って走ってみることにする。
 ブレーキの効きは決して悪くは無いが、非常に良いとは言えない。一般道ではサーボの効きが充分であったが、こうしたフルブレーキになると効きのフィールがいまいちだ。おそらくサーキット走行では適正なブレーキパッドに交換する方がベターだろう。
 こうした低速コーナーへの飛び込みでは、ステアリングの切り込み量の大きさと同時に、ブレーキングでの荷重が前輪にかかるのでステアリングが重い。但し、アンダーステアは全くというほど出ない。パワーを加えてフル加速に入ると僅かにリアが出つつ立ち上がるが少しタイヤが鳴くだけで、問題は起きない。加速に入ると、エンジンが気持ち良く吹け上がっていく、スロットルとエンジンの吹け上がりの付きが実に良いのでスロットルのコントロール性が高い。そして高回転までの伸びはまさにホンダエンジンである。
 同時に加速時にはギアレシオのワイドなことが尚更露見する。エンジンは快調に吹け上がっていくのだが、各ギアでいつまでも引っ張っているとサーキットを走っている気がしない。だいいち裏のストレートで5速に入らないでコーナーに達してしまう。
 やがてS字コーナーや他の中速コーナーでも速度が上がり、車の評価が出来るレベルになるが、サスペンションはこうしたサーキット走行でも柔らかくはなく、かなり、しっかりしている。操縦性はいわゆるニュートラルで、かなり前後のバランスは良い。何か特別 なことをしなければ前後のどちらかが逃げ出す訳でも無い。
 ロール剛性も市販車としてはかなり高く、後で写真を見るとS字などではかなりサスペンションがストロークしているが、乗っている感じではロール感は少ない。
 それとリンクして車の捻れ感が少なく、しっかりした感じか伝わってくる、これはかなりフレーム剛性が高いはずだ。衝突安全を踏まえて開発したフレームはかなり太く、重量 を伴なう反面、サーキットのフィールにプラス面で寄与する部分があることは予期しなかった。
 そして、いつまでもグリップレベルの高さに驚くが、安全な中速コーナーで、これでもか、というくらい攻め立ててリアを強引に流してみると、その流れ出しはグリップレベルが高いだけにズルズルしたものではなく、スーッと素早く出る。しかしステアリングを僅かに修正すると、すぐにグリップに戻り、収束もまた早いのである。
 1時間の占有走行も終わり、撮影されているVEMACを見つつ、このサーキット走行でのポテンシャルの高さを思い起こしてみるが、やはり、車の基本レイアウトをレーシングカーと同様の、ミッドシップ、縦置きのエンジン/ミッション、センター寄りのコックピットなど、重量 物の集中化と低重心化を狙ったことが大きく寄与していると納得できる。サーキット2
 「昔と何も変わっていないだろう」コースの責任者が声を掛けてきた。受付手続きの時にルークが私を紹介したのだ。
 「コースは全く同じだ。でもS字の先にあった民家と、その先の納屋が無くなっている」
何と以前はコース脇の家の玄関先を走り、その家の納屋の横を通った。要するに私道がサーキットの一部であったのだ。
「ああ、3年前に家は無くなったし、納屋は去年焼けたよ」
 モータースポーツという先進技術を応用する世界の一方で、サーキットが昔のままであるあることを自慢するような感覚。いや何ともイギリスらしいことではないか。


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