■VEMAC RD 180のテストドライブ

●一般道のドライブ

RD 180  いよいよVEMACを走らせることになる。先ずはコックピットに乗り込むことから話さなければならない。そうVEMACは特徴のひとつとして右シフトがある。フォーミュラカーは当然ながら、ル・マンに出場する2座席レーシングカーも殆どの場合、右ハンドルで右シフトを採用しているのである。VEMACも同様に理想的なシフトリンケージを求めて、敢えて右シフトを採用したが、なんと言っても問題なのは、その乗降性である。
 試しに何度か乗り降りしてみるが、意外と乗り降りしやすい。無論、乗用車等とは比較出来るものではないが、乗降性は犠牲にしても右シフトと、まで決意したことが、犠牲というほど大袈裟なものではなかったこと、そして我々が比較対象としていたスポーツカーよりも明らかに乗降性が良かったことは、実に意外であった。
 理由はサイドシルを比較的低く抑えられたことにあるようで、体を大きく折り込まなくても済むからである。当然ながら片足はシフトレバーの上を通 過させねばならないが、慣れれば苦にもならないレベルであった。
 目的地はロンドンから北に約200マイル、約300kmの先にあるサーキット、カドウェルパークである。そう、私が作った2シーターレーシングカー「カドウェル」の名を頂いたサーキットである。このVEMACプロジェクトのスタートがカドウェルのロードバージョン化であり、そのVEMACのサーキットテストがカドウェルパークを占有して出来るというのも感慨深いものがある。
 さて、工場を後にして、走り始めてまず感じていたのが「普通に走れる」という感覚だ。
 郊外とはいえ、まだ家々が点在し、英国流の曲りくねった道に、ロータリー(イギリスではラウンドアバウトと呼ばれる)や交叉点で走っては止まる。そういった走行パターンでは、以外とスポーツカーは外から見るカッコ良さとは裏腹に、中では運転に苦労している場合がある。VEMACも、この見かけであるから、私もどこかで構えていたようだが、以外や「普通に走れる」のである。
 また、外見の感じと相反しているのが、ドライビング時の開放感である。コックピットに収まった時に、その空間は他の車に比べて狭いはずなのに、閉所感が無い。着座位 置が低過ぎないこと、製造許容ギリギリまで弧を描いたフロントウインドゥによる視界の大きさ、低いボンネットなどが先ずは視界を確保し、一方、盛り上がったフェンダーは当初オンロードでは邪魔になるのではと心配していたが、全く気にならないし、むしろ丸めな車体形状に対し、車の方向性のインフォメーションを与えてくれているようでもある。
 視覚的な開放感と共に、実際の空間として意外な広さを感じさせているのは外側サイド、ドア側の広がりである。レーシングカー同様に中央に寄ったシートの為、外側に余裕が出来たためである。同時に心配していたのは、その寄り添った2座のシートである。開発時はフルスケールのコックピットのモックアップで確認はとっていたものの、実車ではどうか。私の横にはかなり大柄のルークが乗っての長距離走行だったが、彼と体が当ることもなければ、後述のサーキット走行でも彼を乗せて走り、ハードなドライビングでも邪魔になることは全く無かった。
 一方、すぐに気になったのがミッションのギヤ音だ、オリジナルのトランスミッションを開発したが、この試作車では時間的制約から過渡的な仕様で間に合わせており、量 産車では問題なくなるはずなので、その音は忘れることにする。


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